
この記事の結論
- 保険の皮膚科で生成AIを使い始めるなら、電話の答え方や、薬・処置の説明文のような、受付や看護師が毎日くり返している仕事から試すのが進めやすい方法です。どちらも患者の情報を入れずに作れます。手間の集まる場所は院によって違うため、まず1週間、聞かれた内容を数えて確かめます。
- 薬や処置の説明文は、生成AIに一から書かせるより、院長が決めた説明を保護者向け・高齢の方向け・やさしい日本語などに言い換えさせ、院長が読んだ版だけを配ります。美容皮膚科の施術ページやSNSは、医療広告の確認と、保険と自費の書き分けを別に通します。
- 患部や施術前後の写真は汎用の生成AIに入れません。画像から病変を見分けるAIは医療機器の規制の話で、文章を作るAIの導入とは切り分けて考えます。
目次
皮膚科の生成AIは、くり返しの多い仕事から試せます
保険診療の皮膚科で生成AI(指示に応じて文章を作るAI)を使い始めるなら、電話の答え方や、薬・処置の説明文のような、受付や看護師が毎日くり返している仕事から試すのが進めやすい方法です。手間の集まる場所は院によって違うため、まず1週間、聞かれた内容を数えて確かめます。どちらも患者の情報を入れずに作れ、受付・看護師が「同じ説明が減った」と実感しやすいと考えられる業務です。美容皮膚科を併設している院は、施術ページやSNSの下書きにも使えますが、医療広告の確認を別に通すことが前提になります。
患部の写真を汎用の生成AIに入れる使い方はしません。画像から病変を見分けるAIは医療機器の承認の話で、選び方が文章のAIと違うため、後半で線引きを説明します。
生成AIを院に入れるときの共通の決まりごと(入れてよい情報・いけない情報、使う道具、院内ルール1枚の作り方)は、クリニックの生成AI導入はどこから始めるか(全診療科共通)にまとめています。本記事では、保険の皮膚科と美容皮膚科を併設する院ならではの使い方に絞ります。
皮膚科のAI導入は、5つの順番で進めます
- 手間の集まる場所を見る受付・看護師・医師のどこで、同じ説明をくり返しているかを書き出す
- 電話の答えの台帳を作るよく聞かれる質問と院の答えをまとめ、受付の答え方をそろえる
- 説明文を医師の確認つきで作る塗り薬・飲み薬・処置のあとの注意を、一般的な説明として下書きさせる
- 自費の文章を分けて扱う施術ページ・SNS・ブログは、医療広告の確認を通してから出す
- 写真と診断には使わない患部の写真は入力せず、画像診断のAIは機器選びの話として切り分ける
まず受付と看護師の手間を1週間数えます
保険の皮膚科で生成AIを試しやすいのは、医師の診察そのものより、受付の電話・窓口での案内と、看護師の処置前後の説明です。患者数の多い保険の皮膚科ほど、同じ説明の1回分を短くできれば、受付と看護師の手の空き方が変わります。美容皮膚科を併設すると、施術の料金やダウンタイムの問い合わせがそこに加わります。
どこに手間が集まっているかは院によって違うため、まず1週間ほど、予約・待ち時間・持ち物・薬・料金の欄を作った紙を受付と処置室に置き、聞かれるたびに正の字を付けてもらうと、AIに任せる業務の候補がはっきりします。
| 場面 | くり返しやすい説明の例 | 生成AIでできること | 確認する人 |
|---|---|---|---|
| 電話(保険) | 予約の要否・混む時間帯・初診の持ち物・子どもの付き添い | よくある質問と答えの台帳の下書き | 事務長・受付の責任者 |
| 窓口(保険) | 次回の来院の目安・お薬手帳・紹介状の扱い | 院内掲示・案内カードの文面 | 事務長 |
| 処置の前後(保険) | 液体窒素の処置後のケアや、塗り薬の使い方の注意 | 一般的な説明文の下書き、やさしい言葉への言い換え | 院長(医師) |
| 電話・窓口(自費) | 施術の料金・回数・ダウンタイム・保険が使えるか | 料金表に沿った答え方の台帳 | 院長と事務長 |
| 施術ページ・SNS(自費) | 施術の流れ・リスク・費用 | 下書き(医療広告の確認が前提) | 院長 |
表のどの業務も、特定の患者の氏名や症状を入れずに作れます。「この患者さんにどう説明するか」をAIに考えさせるのでなく、院として決めた説明を、読みやすい文章に整えさせるのが皮膚科での使い方の基本です。
電話は、答えの台帳で減らします
受付の電話を減らすには、よく聞かれる質問と院の答えを1つの台帳にまとめ、受付の答え方とホームページの案内を同じ言葉にそろえることから始めます。電話の自動応答を入れる前にこの台帳がないと、AIに何を答えさせるかも決まりません。
- 質問を集める受付が1週間ほど、電話で聞かれたことを正の字の紙に記録する(患者の名前は書かない)
- 答えの下書きを作らせるメモと院の決まり(診療時間・予約の仕組み・料金表)を渡し、質問ごとの答えを下書きさせる
- 院の運用と照らす事務長が、実際の受付の運用と食い違いがないかを読んで直す
- 外に出す直した答えを、ホームページのよくある質問・院内掲示・予約ページの案内に載せる
- 定期的に足す新しく聞かれた質問を、月に1回ほど台帳に足す
皮膚科の電話は、「今日は混んでいるか」「予約なしでも診てもらえるか」「子どもだけで行ってよいか」のように、ホームページに書いてあれば電話しなくて済む質問が混ざりがちです。台帳の答えをホームページに出しておくと、案内で済む電話が減る方向に働きます。順番受付やWeb予約のシステムを入れている院では、電話が「順番を過ぎてしまった」「システムの使い方が分からない」に移ることがあるため、台帳にはこの答えも入れます。カルテの音声入力やAI問診は患者の情報を扱うため、本記事では扱いません。
「この湿疹は受診したほうがよいか」「薬が合わない気がする」のような、症状を聞いて答える質問は、台帳に答えを書きません。「診察で確認します」「院長に確認して折り返します」と答える質問として、受付が迷わないように分けておきます。
電話の自動応答は、安全管理ガイドラインで確かめる
電話を自動で受けるAIのサービスもありますが、患者の氏名・生年月日・症状を聞き取る場面が多く、診療の情報を外部の事業者に渡す業務になります。厚生労働省の医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版(令和8年6月)のQ&A(令和8年9月)の企画管理編Q5は、委託したクラウドの事業者から患者の情報が漏れた場合でも、医療機関が医療情報の管理主体としての責任を負うとしています。生成AIに入力した情報が学習などのために保存されないことを契約で確かめる点(同じQ&Aの企画管理編Q18)と、道具の選び方は、全診療科向けの記事で説明しています。自動応答を検討するときは、こうした点を契約書と利用規約で確かめてからにします。
薬と処置の説明は、医師が読んでから配ります
皮膚科で生成AIに任せるのは、院長が決めた塗り薬・処置の説明を、相手に合わせて言い換えるところまでで、塗る量・回数・期間は決めさせません。院外処方の院では飲み薬の説明は薬局が担うことが多いため、院に残るのは外用薬の使い方、液体窒素・切開・生検のあとのケアといった説明です。下書きは、院長が読んで直した版だけを患者に渡します。生成AIの文章には不正確な内容が混ざることがあり、個人情報保護委員会も生成AIサービスの利用に関する注意喚起等(令和5年6月2日)で、応答結果に不正確な内容が含まれることがあると注意しています。
まず、保湿剤と塗り薬を塗る順番、ニキビの塗り薬を使い始めたときのヒリつき、液体窒素のあとの水ぶくれ、水虫の薬を症状が消えても続ける理由など、院長がふだん口で伝えている説明を文字にします。そのうえで、同じ塗り薬の説明でも、子どもの保護者向け、高齢の方向けに大きな字と短い文で、日本語が得意でない方向けにやさしい日本語や外国語で、というように、元の内容を変えずに書き分ける作業は、AIが得意とするところです。
- 院長が書いた説明を、保護者向け・高齢の方向けに言い換えさせる
- 処置のあとの注意を、箇条書きの1枚に整えさせる
- 外国語の説明文の下書きを作らせ、院で確認してから使う
- 塗る量・回数・使う期間をAIに決めさせる
- 特定の患者の症状を入力して、説明文を作らせる
- 院長が読まないまま、AIの文章を印刷して配る
薬ごとの細かな注意は、添付文書などの原典と照らし合わせます。外国語の説明文は院内で正しさを確かめにくいため、医療用語の多い説明ほど、使う範囲を絞っておくのが無難です。
院長の説明文を貼り、「小学生の保護者が読む前提で、内容を足さず削らず、1文を短く、専門用語は言い換えて元の語を括弧で残して」と頼みます。内容を足さないよう指示しておくと、院長が読み直すときに元の説明との違いだけを見れば済みます。
説明文は、作ったあとに処方の方針が変わっても古い版が院内に残りがちです。説明文ごとに「いつ・誰が確認したか」を書いておくと、どれが今の版かで迷わずに済みます。
美容皮膚科の文章は、広告の確認を別に通す
美容皮膚科の施術ページ・SNS・ブログは、生成AIで下書きしてもかまいませんが、保険診療の案内文とは別の確認の流れを通してから出します。ホームページやSNSは、院が特定できて患者を誘引する目的があれば医療広告の規制の対象で、AIが書いたかどうかは関係ありません。
自費の施術ページは、厚生労働省の医療広告ガイドラインの「限定解除」(ホームページで広告できる事項の制限を外す条件)の要件として、治療の内容・費用と、主なリスク・副作用などを載せることが求められています。生成AIに施術ページを下書きさせると、効果や利点の説明に偏り、費用やリスクの記載が薄くなりがちです。AIの下書きに混ざりやすい表現と限定解除の要件は、クリニックのブログをAIで書くときの注意点で原文に沿って整理しているため、本記事では皮膚科ならではの、保険と自費の書き分けに絞ります。
| 確認すること | 保険診療の案内文 | 自費の施術ページ・SNS |
|---|---|---|
| 読む人 | 事務長(説明文は院長) | 院長 |
| 医療広告の確認 | 院内掲示や案内でも、ホームページに載せる場合は確認する | 施術ページは限定解除の要件、SNSは広告できる事項に収まっているかと、避けたい表現が混ざっていないかを確認する |
| 保険が使えるかの記載 | 院の算定の実際と合っているか | 保険の治療と自費の施術が混ざって読めないか |
| 費用 | 書く場合は窓口の負担の目安にとどめる | 料金表と同じ金額・回数・総額か |
皮膚科ならではの注意は、保険が使えるかどうかの書き方です。生成AIは、保険で受けられる治療と自費の施術を一般論で混ぜて書くことがあります。ニキビやシミのように、保険の治療と自費の施術の両方で扱う悩みは特に、どの治療が保険でどれが自費かを、院の実際に合わせて院長が直します。
LINEの自動応答も院の答えです
美容皮膚科の問い合わせをLINEで受けている院では、自動応答の文面も院の答えとして患者に届きます。料金やダウンタイムの答えを電話の台帳とそろえ、施術ページと同じように医療広告の確認を通しておきます。
画像診断AIは医療機器、文章のAIとは別
皮膚科は患部の写真で経過を残す場面が多い診療科ですが、患部の写真や施術前後の写真は、汎用の生成AIに入力しません。病歴や診療が行われたことは、個人情報保護法の要配慮個人情報(取り扱いに特に配慮が必要な個人情報)にあたり、顔が写っていない写真でも、来院日や症状と組み合わせると誰の写真か分かる場合があります。
処置の合間に、スタッフが私物のスマートフォンで撮った患部の写真をAIのアプリに入れて説明を求める、という使い方は避けます。医療情報システムの安全管理に関するガイドラインのQ&A(令和8年9月)企画管理編Q26は、個人所有の端末を使う場合も利用条件・範囲・管理方法を規程に含めることを求めています。院内ルールに「患部と施術前後の写真は生成AIに入れない」と書き、撮影に使う端末も決めておきます。
画像から病変を見分ける診断支援のAIは、文章を作るAIとは扱いがまったく違います。厚生労働省のプログラムの医療機器該当性に関するガイドライン(令和5年3月31日一部改正)は、診療予約・受付・会計などの一般事務の負担を減らす院内業務支援のプログラムや、患者に治療方法を理解してもらうための説明用のプログラムを、医療機器にあたらない例として挙げています。一方で、疾病の早期発見やスクリーニング、医師の診断の補助を目的とするプログラムは「診断」を意図するものとして扱われ、医療機器の規制の対象になり得ます。
このため、画像診断を助けるAIを使うかどうかは、医療機器として承認などを受けた製品を選ぶ話になり、本記事で扱う文章のAIの導入とは切り分けて考えます。スタッフが患部の写真をAIに見せて説明を求めることがないよう、院内ルールに書いておきます。
皮膚科の生成AI活用は、ととっぷにご相談ください
受付や説明文への生成AIの使い方は、5つの順番に沿って院内で進められます。始めるなら、受付と看護師に1週間、同じ説明をくり返した場面を正の字で記録してもらうところからです。記録がそろえば、電話の答えの台帳と説明文のどちらから手をつけるかが決まります。
皮膚科で手が止まりやすいのは、作業そのものより確認の時間です。電話の台帳は受付の実際の運用と1問ずつ突き合わせ、外用薬や処置の説明文は院長が1枚ずつ読み、美容皮膚科の施術ページやLINEの文面は出すたびに医療広告ガイドラインと照らします。外来の多い日が続くと、次のあたりが後回しになりがちです。
| 順番 | 手間がかかる・判断が難しいところ | 確かめる先 |
|---|---|---|
| 手間の集まる場所を見る | 受付・看護師のメモを、AIに任せる業務と任せない業務に分けること | 院内(受付・看護師のメモ) |
| 電話の答えの台帳を作る | 症状を聞く質問との線引きと、ホームページへの反映 | 院内の受付の運用。ホームページのよくある質問は、ととっぷでも見直しをお手伝いできます |
| 説明文を医師の確認つきで作る | 院長が読む時間の確保と、版の管理 | 院内(院長が読んで確かめる) |
| 自費の文章を分けて扱う | 限定解除の要件と避けたい表現の確認、保険と自費の書き分け | 医療広告ガイドライン・事例解説書の原文。施術ページ・SNSの表現は、ととっぷでも確認をお手伝いできます |
| 写真と診断には使わない | 院内ルールへの書き込みと、スタッフへの周知 | 院内 |
ととっぷは、美容医療を中心に100院以上のクリニックの集患を支援し、患者向けの美容医療相談室(クリニックの掲載は無料)も運営しています。電話の答えの台帳や説明文づくりといった院内の生成AIの活用と、自費の施術を探す患者に貴院が見つかるようにする側の、両方をお手伝いしています。患者がシミ・くすみの治療やフォトフェイシャル、肌育のような自費の施術をChatGPTなどのAIで調べたときに、貴院がどう紹介されているかを確かめ、施術ページや記事を、AIに紹介されやすく、保険と自費の区別が伝わる形に整えます(AI検索対策)。施術ページ・SNSの表現の確認も、あわせてお引き受けしています。
院内の生成AI導入とあわせて、ホームページからの集患の流れも見直したい場合は、アクセス解析とサーチコンソールの数字を拝見して見立てを出す医療専門のFDMによる、無料の集客診断から始められます。
院内でそのまま使える
皮膚科で生成AIを使い始める前の確認チェックリスト
チェックして確認できます。印刷してスタッフと共有することもできます。
よくある質問
受付の電話が多くて困っています。AIの電話自動応答を入れれば解決しますか。
自動応答は、患者の氏名や症状を聞き取る場面が多く、診療の情報を外部の事業者に渡す業務になります。先に、よく聞かれる質問と院の答えを台帳にまとめてホームページや院内掲示に出すと、案内で済む電話が減る方向に働き、自動応答に何を答えさせるかも決まります。自動応答を入れるかは、そのあとで契約書と利用規約を確かめて判断してください。
診察の会話からカルテを下書きするAIは、皮膚科でも使えますか。
患者の診療情報をそのまま外部の事業者に渡す使い方になるため、最初の一歩には選びません。検討するときは、医療機関向けとはっきり示した製品かどうか、入力した内容が学習などのために保存されないことが契約で担保されているか(安全管理ガイドラインのQ&A企画管理編Q18の論点)を、契約書と利用規約で確かめてからにします。電話の台帳や説明文で院内の使い方が固まってから判断しても遅くありません。
外国人の患者さん向けに、塗り薬の説明を外国語で作ってもよいですか。
院長が日本語で決めた説明を、生成AIに外国語へ書き分けさせる使い方はできます。ただし院内で正しさを確かめにくいため、医療用語の多い説明ほど使う範囲を絞り、可能なら外国語の分かる方に一度読んでもらってから配るのが無難です。特定の患者の情報は入れずに、一般的な説明として作ります。
美容皮膚科のスタッフがInstagramの投稿文をAIで作っています。何に気をつければよいですか。
院のアカウントの投稿も、院が特定できて患者を誘引する目的があれば医療広告の規制の対象です。効果を言い切る表現や体験談のような書きぶりが混ざっていないかを、投稿前に院長か決まった担当が読む流れにしてください。保険の治療と自費の施術が混ざって読める書き方にも注意が要ります。
皮膚の画像を判定するAIを導入したいのですが、ChatGPTのような生成AIで代わりになりますか。
代わりにはなりません。疾病の診断の補助やスクリーニングを目的とするプログラムは医療機器の規制の対象になり得るため、画像診断を助けるAIは、医療機器として承認などを受けた製品を選ぶ話になります。汎用の生成AIに患部の写真を入れて病名を聞く使い方は、個人情報の面からも院では行わないでください。




